GEM特設ページ
GEMについて
GEMとは
GEM(Gas Electron Multiplier)は微細加工技術を利用した高性能ガス放射線検出器:MPGD(Micro Pattern Gas Detector)の1種です。両面フレキシブル基板に形成した無数の数十μmの孔とガス増幅を利用して電子を数千~数万倍に増幅します。フレキシブル基板の基材には50-100μm厚程度のポリイミドフィルムまたは液晶ポリマーが使用されています。この基材の表裏を数μm厚の銅で被覆し、基材を挟んだ銅皮膜間に数百Vの電位差を設ける事により、無数の孔に強い電場を形成します。この電場によって電子なだれ増幅を起こし、電子を信号として捉えることができます。
GEMの表面 GEMによる電場のイメージ
<出典>KEK 宇野 彰二 放射線検出器 2016.6.27 5ページ
P-THIN-GEM について
旧製品に比べ、イベントフォーマットを最適化し、高イベントレートに対応できるように改良しています。また、ガスフローについても見直しを行い、検出部へのガス供給ルートを改善、効率的なガス置換を実現しました。装置サイズも旧製品に比べ小型化しています。
読み出し用エレクトロニクス
当社で開発したメモリ付256ch読出ボード(MPGD-256ch-4M-Board)をご紹介いたします。
MPGD-ASD搭載
MPGD-ASDは増幅器(Amplifier)、波形整形回路(Shaper)、波高弁別回路(Discriminator)を搭載したMPGD検出器用のASICで、KEKの宇野先生監修のもと開発しました。約10mmx10mmのパッケージに32chの回路を搭載し、多チャンネルでコンパクトな回路を構成できます。このMPGD-ASDを8個搭載し、小型基板でありながら256chの多チャンネル化に成功しました。
4MBメモリ実装
この基板には4MBのメモリを搭載しています。後述のFPGAで1イベントを5Bytesで出力しますので、約800,000イベント分を蓄える事ができます。これにより、中性子発生頻度の高い時にはメモリにデータを蓄積、発生頻度が低くなった時にデータを転送することができ、TOF分布の歪を解消、平均データレートが改善しました。
Kintex7 & SiTCP
回路の心臓部のFPGAにはザイリンクス社の・Kintex7を採用しております。高速な信号処理回路、MPGD-ASDの制御回路、そして高速データ転送回路としてSiTCPが実装されています。
添付ソフトウェア
P-Thin-GEMに添付されているソフトウェアで検出器の性能を簡単かつ効率的に操作することができます。直感的なGUIを搭載し、ユーザーフレンドリーな画面でセッティングからデータ収集、2Dヒストグラム、1D TOF ヒストグラムなどの表示が可能です。取得したデータはイベントRawデータ、 中性子強度を3次元配列にまとめた3Dデータ、測定条件ファイル、2D ヒストグラム画像、および、1D TOF ヒストグラム画像等が保存でき、実験後のデータ処理に役立ちます。