SiTCP-XG(β)特設ページ
SiTCPについて
当社は10GbEハードウェアネットワークプロセッサ SiTCP-XG(β) を公開しました。
SiTCPとは物理実験のフロントエンドを、イーサネットでPCに接続する技術で、内田智久博士により開発されました。
SiTCPとは
• ハードウェアによるTCP/IP通信で安定した高速通信が可能
• コンパクトな回路規模で外付け部品が少なく実装が簡単
• 使いやすいユーザーインタフェース
などの特徴があり、XilinxのFPGAライブラリとして提供されております
SiTCP-XG登場!
これらの特徴を受け継ぎ、10Gigabit Ethernetに対応したのがSiTCP-XGです。
(エスアイティーシーピーテンジーと読みます)
すでにKEKの本多良太郎博士、西村龍太郎博士らによりSiTCP-XGを採用した実験用回路基板が開発され、それぞれの実験で利用されています。
それぞれの採用例について、開発者にお話をお伺いしました。
KEK/E-sys 本多様
VME6U型 汎用連続読出基板
●基板の特徴についてお聞かせください。
本回路はSiTCPからSiTCP-XGへの過渡期の回路であり、どのような状況でもTCP/IP通信によって1Gbps以上のデータ転送量を確保するためにトランシーバを2つ搭載しています。
本回路は基板サイズに制限がないためトランシーバを2つ搭載できましたが、連続読み出しDAQにおいてはオンディテクター型のように基板サイズに制限があるフロントエンド回路であっても十分なデータ転送スピードを持つ必要があります。
そのような回路ではSiTCPを複数搭載できない場合があり、より高速な通信規格が必要となります。
●SiTCP-XG採用の決め手はなんでしょうか?
トランシーバの通信能力だけで考えれば、独自プロトコルの導入によって上記のような要求は満たせますが、一般的な通信規格であり市販のスイッチやNICがそのまま利用できるSiTCP-XGには簡便さという点で大きな利点があります。
●今後の計画についてお聞かせください。
データ通信技術およびコンピュータの処理能力の向上により、現在ハード的なトリガーを利用しない連続読み出しDAQは次世代のDAQとして期待されています。
SiTCP-XGは次世代DAQにおけるフロントエンド回路の標準通信規格として今後も採用していく予定です。
KEK/PF 西村様
SOIピクセル検出器の制御・読出し用基板
● 基板の特徴についてお聞かせください
SOIピクセル検出器の制御・読出し用基板として開発されました。
従来の1GbE版SiTCP使用のFPGA基板(SEABASシリーズ)の後継として使用が予定されています。
特徴としては、FPGA部分の回路周りに既製品基板を使用、必要なIOと電源系を本基板で拡張する形態としています。こうすることで、必要となる回路規模や将来的なアップグレード等必要に応じてFPGAの交換・変更をしやすくなっています。
(現行のSEABAS基板ではFPGAがディスコンになり大きな問題となりました)
また、電源についてLV外部電源以外にACアダプタでの給電も行えるようにし、セットアップが簡略化可能になっています。
デジタルIOはMILコネクタ経由(差動対応)、ADC・DACはFMCを介して外付けとし、多くのバリエーション・接続形態が存在するSOIピクセル検出器に対して柔軟に対応できるよう考慮して設計されました。
従来のSEABAS基板では検出器本体をSEABAS基板に直結する形態としていたため、検出器を冷却する時にSEABAS基板ごと冷却容器内に納める必要がありました。
本基板ではすべてケーブルを介しての接続を標準とし、このような場合にも対応が容易なようにしています。
●SiTCP-XGを採用した理由は何でしょう?
これまでSOIピクセル検出器の読出しには1GbE版のSiTCPを使用してきましたが、
放射光でのイメージング実験等への利用を前提にピクセル数や読出し速度の向上を考えたとき、従来の1GbE版SiTCPでは帯域が不足してしまいます。
一方で、これまでの1GbE版SiTCPを使用したシステムに対しては、既にこれに対応するソフトウェア資産が蓄積されており、全く互換性のないシステムへの移行は人的資源が限られる状況ではハードルが高い側面があります。
SiTCP-XGであれば、1GbE版とは通信プロトコルレベルでの互換性が高いため、10GbE対応のハードウェアさえ用意すればソフトウェア資産をほぼそのまま継承でき、従来の1GbE版システムとの並列運用も容易なため、セットアップを徐々に更新していくような導入も可能です。
既に1GbE版のSiTCPを使用している環境であれば比較的低いハードルで10GbEへの移行を進められ、高帯域の恩恵を受けることができる点がSiTCP-XGを採用した決め手となりました。
●SiTCP-XG採用の利点は何かありますか?
通信帯域では他により高速な規格ありますが、
・規格上保証される接続距離が長い
・ハブ等を介して多対多接続が可能でセットアップの柔軟性が高い
(状況に応じて物理的な接続を変更せずに通信を適宜他のDAQ PCに切り替える等)
・ケーブルやDAQ PC側のアダプタ等の入手性が良く、メンテナンス性が良い
などが挙げられるます。
単に10GbEを使用したいだけであればフルスタックのFPGAライブラリが他にも存在しますが、
・回路規模が大きいため比較的高額なFPGAが必要になる場合が多いこと
・IFについても高機能な分だけ複雑であり、ファームウェア開発の難易度が高い など、ハードルがあります。
その点SiTCP-XGは
・機能的に制限はあれど回路規模が小さく、下位クラスのFPGAでも搭載可能
・従来のSiTCPと同様にIFが比較的シンプルで取り扱いしやすいこと
といった点で、基板・ファームウェアを自分で開発する場合には優れていると考えています。
●今後の計画についてお聞かせください。
まずは今回製作した基板について10GbEでの通信を含めた動作確認をこれから進めていく予定です。動作に問題が無いようであれば放射光実験へのSOIピクセル検出器と組み合わせての導入を行い、帯域増加による実験の高度化を実現して行きます。
さらに、現在SEABAS基板を使用しているユーザーにも本基板を使用していただけるよう検証とサポートを進める予定です。
その中で、コストの削減や搭載希望の多いIF・機能を考慮して改良型・バリエーションの製作も検討したいと考えています。
SiTCP-XGの説明書はこちらからダウンロード可能です。
現在GithubにてKintex-7向けNetlist、Virtex-7向けNetlistが公開中です。 またKC705用SITCP-XG サンプルコード、VC707用SITCP-XG サンプルコードも合わせて公開しております。
なお、現在のSiTCP-XGはβ版です。ライセンスのご購入の際はForce Defaultの状態で充分に動作をご検証の上、購入をご検討ください。